これまでの記事で、さまざまな大学や研究機関の論文や実験データを詳しく見てきました。
それらの研究では、桑の葉には多くの優れた健康機能があり、食後血糖値の上昇を抑えるのみでなく、血圧や中性脂肪、コレステロールの値を抑制する等の効果も期待できると示唆されています。
参 考 カテゴリ『研究データ・論文』
では、実際に市販されている桑茶・粉末・サプリメントなど健康食品としての桑の葉商品に、糖尿病のみならず高血圧・脂肪肝・動脈硬化など、あらゆる生活習慣病や肥満の予防効果を果たしてどのくらい期待してよいものでしょうか?
この記事では、 次の3点に分けて その結論を整理したいと思います。
① | 血糖値を下げる効果・効能はあるの? |
② | 高血圧・脂質異常症・脂肪肝など、糖尿病に深く関わる生活習慣病を予防 or 改善する効果はあるの? |
③ | 肥満防止やダイエットの効果はあるの? |
目次
①桑の葉商品に、血糖値を下げる効果・効能はあるの?
血糖値の急激な上昇を抑える効果が、桑の葉には確かにある程度、期待できそうです。
別記事でも詳しく述べましたように、他の野菜にはほとんど見られないが桑の葉には特徴的に多く含まれる DNJ(1-デオキシノジリマイシン) が、小腸で糖質を分解吸収する酵素“α-グルコシターゼ”に糖質よりも優先的に結合するため、糖質の吸収を妨げる働きがあります。
これによって血中に流れる糖の量が少なくなりますので、その分血糖値が低く保たれるというわけです。
- オススメ! DNJが血糖値を抑えるメカニズムについては、下記の別記事をご覧ください。
- 桑の葉に多い“1-デオキシノジリマイシン(DNJ)”が血糖値を抑えてくれる仕組みは?
健診や血液検査で異常なしと言われても、ご飯やパンなど主食類、あるいは甘いお菓子が好きでよく食べるなど、食後に高血糖に陥っているのではないか…と心配な方は、桑の葉のお茶や青汁、サプリメント等を利用してみるのもよいでしょう。
ただし、下の別記事でも触れましたように、桑の葉のお茶にしろ青汁にしろサプリメントにしろ、これらはあくまでも“健康食品”であり、医薬品ではありません。
桑の葉が血糖値を下げると言っても、正式の糖尿病薬であるアカルボースほどの効果は期待できないのです。
参 考 桑の葉茶と糖尿病薬アカルボース、血糖値を下げる効果が高いのはどっち?■武庫川女子大学の研究
ヘルシーな食生活や適度な運動など、健康を守るためのよい生活習慣を心がけた上で、さらにその一助となることを期待して摂取するのが健康食品というものでしょう。
「桑の葉を飲んでいるから、血糖値の上昇は心配しなくても大丈夫」とばかりに、暴飲暴食や不摂生を続けたり運動をさぼったりするならば、桑の葉の効果がないどころかむしろ逆効果で、油断した分、生活習慣が余計に乱れてかえって体調を壊すことにもなりかねません。
ご自身のライフスタイルの中で、できるだけ健康的な生活習慣を心がけるよう気配りしながら、必要に応じて健康をサポートする一手として桑の葉を愛用していただくのが最もおすすめです。
② 桑の葉商品に、高血圧・脂質異常症・脂肪肝など、糖尿病に深く関わる生活習慣病を予防 or 改善する効果はあるの?
桑の葉には、血糖値の抑制作用ばかりでなく、血圧降下や脂質代謝の改善など、糖尿病と関連の深いさまざまな生活習慣病 (高血圧・脂質異常症・脂肪肝など) の予防効果が期待できる作用のあることが分かっています。
- オススメ! これについて詳しく知りたい方は、以下の別記事を参考にしてください。
- 『桑の葉が高血圧を予防して糖尿病の合併症を防ぐ?■神奈川県の研究論文より』
- 『桑の葉が脂質を抑えて糖尿病の原因となる肥満を予防する?■神奈川県の研究論文より』
したがって、あくまでも健康体の方が、予防法の一環として適切な食生活や運動習慣を守るとともに、毎日桑の葉を摂取する習慣を付けるのなら、現在の健康を維持するためにある程度のサポート効果は期待できるかもしれません。
しかし、別記事で詳しく述べたのと重なりますが、
① | 桑の葉茶や粉末・青汁といった、桑の葉をそのままの形で加工した商品については、実際に有効成分を含有している量が、血圧降下や脂肪代謝の改善など、求める効果を本当に得られるだけの十分なレベルには到底満たないと思われる。 |
② | 有効成分を濃縮していると謳っている桑葉関連のサプリメントについても、本当にこれらの効果を期待できるだけの有効成分が十分に含まれているのかどうか、私たち消費者には知りようもない。 |
といった理由から、やはりそれらの生活習慣病 (高血圧・脂質異常症・脂肪肝など) であると診断を受け、患者さんとなった方が、医師から処方された正式な薬を服用する代わりに桑の葉を摂取しても、病気を改善や治療する効果・効能はほとんど期待できない と思われます。
- CHECK!上の黄色い枠にまとめた2項目について、詳しい説明は下記のリンク先をご覧ください。下の記事では、血糖値を抑える効果に特化して述べていますが、他のさまざまな効能を持つ成分についても同じことが言えます。
- 【結論①】桑の葉に糖尿病の治療や症状の改善をする効果は、ある?ない?
③ 桑の葉に、肥満解消やダイエットの効果はあるの?
① 中性脂肪やコレステロール値を低下させて、ダイエット効果あり?
確かに桑の葉には、豊富に含まれるポリフェノールや食物繊維により、余分な脂肪の吸収を妨げたり肝臓でのコレステロール合成作用を弱め、血中の中性脂肪やコレステロール値の上昇を抑える効果が期待されるようです。
オススメ! 『桑の葉が脂質を抑えて糖尿病の原因となる肥満を予防する?■神奈川県の研究論文より』
しかし先にも述べましたが、天然の桑の葉や市販の桑の葉食品は“薬”とは違いますので、急に摂取し始めたからといって一朝一夕に効果が出る…といったものではありません。
健康のために桑の葉を飲み始めるのはよいですが、それと同時にヘルシーな食事や適度な運動を習慣づけるなど、日頃の生活全体から健康を心がけることが大切です。
体が健康になれば自然とすっきりした体型に変わってくる。
そのような無理のないダイエットの在り方を目指しましょう(^^)
痩せることよりもむしろ体の中からきれいになることを目標にして、気長に楽しく、良質な桑の葉食品を摂り続けることが理想的でしょう。
② DNJの糖質吸収阻害によって、消化カロリーが減る?
長崎県立大学の研究では、DNJによって小腸での吸収を阻害された糖質が大腸で腸内発酵を受け、その分解過程で摂取カロリーが50%減少すると主張しています。
参 考 ネット上では、研究の要旨とプレゼン用のPDFしか探せませんでしたが、よければご参考に。
「桑葉エキス末の血糖上昇抑制作用を利用した機能性食品開発に関する研究」中村まり子
「桑葉抽出物を用いた食後血糖上昇抑制食品の商品化と普及」奥 恒行
DNJが糖質の消化を妨げる段階で何%のカロリー減となるのかがはっきりしませんが、少なくとも吸収を妨げられて大腸に届いた糖質については、体内に吸収されるカロリーは約半分になるというのです。
ある種の食物繊維のように、ほとんど吸収されずに排出されてしまうわけではありません。
この説が本当ならば、桑の葉を通してDNJを体内に取り入れることで、糖質からの摂取カロリーを少しは減らせるということになります。
しかし一般的には、アグリボース等医療機関で処方される 糖尿病薬 は、小腸での糖吸収を阻害することで血糖値の急激な上昇を抑える効果はあるものの、大腸で腸内細菌によって分解・吸収されることで 緩やかにではあるが最終的には体内に糖は全て吸収されていく ため、カロリー削減による肥満予防やダイエットの効果はないとされています。
桑の葉に含まれるDNJもまた、これらと同じくα-グルコシターゼ阻害成分の一種であるため、これらの糖尿病薬に準じるものと見なしておくのが無難とも考えられます。
つまりは現在のところ、この問題について科学的研究の事例は非常に少なく、はっきりとした結論を出すのは尚早ということです。
したがって現時点では、糖質が吸収阻害されてカロリーを減らせるという説については、糖尿病薬に対する一般的な見解がDNJにも当てはまるという考え方を、当ブログでは支持します。
桑の葉についても、肥満予防やダイエット効果は、短期間で目に見えるほどのものは期待できないと考えておくほうがよいでしょう。
【まとめ】糖尿病の診断を受けた方は、健康食品に頼るのではなく、必ず医療機関で治療を受けましょう
これまで見てきたように、桑の葉のお茶や青汁、サプリメント等はあくまでも食品であり、薬ではありません。
血糖値上昇の予防に一役買うのを期待しつつ食べ物として摂るのはよいですが、いったん糖尿病にかかってしまったら、病状の治療や改善の効果までは望めません。
健診で空腹時血糖やヘモグロビンA1cの数値が悪かった方は、かかりつけの医療機関を受診して本格的に検査をし、糖尿病が判明した場合はきちんと病院の治療方針に従いましょう。
もしも桑の葉茶やサプリを服用している場合は、血糖値を下げる薬剤との相互作用が出る恐れもあるので、必ず担当のお医者さんに相談してくださいね。
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