「桑の葉に血糖値やコレステロール値を下げる効果がある」
このように言われて久しく、桑の葉のお茶製品やサプリメントも一般のドラッグストアでよく見かけるようになりました。
特に桑の葉を乾燥・焙煎して市販されている「桑の葉茶」は、普通の緑茶のような感覚で飲みやすく、血糖値が気になる方には人気があるようです。
しかし実際のところ、その効果・効能はどれほどのものなのでしょうか?
確かに桑の葉には“1-デオキシノジリマイシン(DNJ)”と呼ばれる成分が多く含まれ、この成分は小腸における糖の吸収作用を阻害して血糖値の上昇を抑える効果が確かめられています。
これについて詳細は、以下の別記事を参考にしてください。
オススメ! 桑の葉に多い“1-デオキシノジリマイシン(DNJ)”が血糖値を抑えてくれる仕組みは?
また、このDNJ自体には、糖尿病の治療薬として使われる“ボグリボース (ベイスン)”と呼ばれる医薬品と同等の効果があるという研究結果も出ているそうです。
また、桑の葉は多くのフラボノイド類や食物繊維、良質のミネラルを含み、これらの相互作用でも血糖値を抑えたり脂肪の代謝を改善する効果があるという実験データもあります。
では、だからと言って、例えば糖尿病の診断を受けた方が、病院で処方される糖尿病の薬の代わりに桑の葉茶を飲んで糖尿病を治療することができるのでしょうか?
また、お菓子やスイーツ、脂っこい食べ物が大好きだからといって、食生活の改善を全くしようとせずにひたすら桑の葉茶を飲んで、肥満や生活習慣病を予防することができるでしょうか?

…これらは少し極端な仮定ですが、やはりいわゆる食品としての健康茶と医薬品とは違うので、薬同様の効果を健康茶に求めるべきではない…ということを実証しようとした研究があります。
そこで今回は、その研究について、特に桑の葉茶に関する実験データの部分を集中的に取り上げ、詳しくご紹介していきます。
実験室で桑の葉から特殊な成分のみを抽出するという専門家特有の方法ではなく、私たちが家庭で淹れて飲む“ごく普通のお茶”という形で実験を行っているので、私たち一般人にも非常に興味深く、参考になるのではないかと思います。
いわゆる普通の桑の葉茶 vs 医療用の糖尿病薬。
どちらが血糖値を抑える効果が高いかを調べた実験とは?
これは、少し古いですが2004年、日本薬学会の刊行する『薬学雑誌』に発表された 武庫川女子大学の研究 です。
桑の葉茶だけでなく、グァバ茶、ヤーコン茶、サラシアオブロンガ茶など、血糖値の抑制や肥満予防を謳って市販されている7種類の健康茶について、果たして本当に糖質吸収抑制の効果があるのか、その実態を、代表的な糖尿病薬アカルボース (商品名グルコバイ) との比較実験にて確かめたものです。
この研究の実際の論文は、以下のリンク先に載っています。
日本薬学会「薬学雑誌」公式サイトの中にアップされているものです。
その中でここでは、桑の葉茶のみを取り上げて、アカルボースと実験データを比較した結果を見ていきたいと思います。
どんな実験?
【実験の内容】
普段私たちが摂取するエネルギー源は、およそ60%が糖質であり、その大半がデンプンと砂糖です。
そこで、デンプンを加水分解して生じるスクロース (=ショ糖。砂糖の主成分) とマルトース (=麦芽糖) を、実験用ラットに投与します。
その後、桑の葉茶を始めとする健康茶の濃縮液、もしくはアカルボース水溶液(※)を実験動物に投与して、血糖値の変化を測定するというものです。
商品名:グルコバイ
効能成分名:アカルボース
効能成分の含有量:1錠中にアカルボース100mg
以下、「アカルボース1錠」と記載している箇所もありますが、“グルコバイ1錠”と同義ですのでご了承ください。
【実験の詳細】
健康なラットを“対照群”と“桑の葉茶の投与群”に分けます。
(1群6匹。他の健康茶を投与する群については、ここでは省略)
② 実験開始から120分経過後、今度はラットの各群に次のように投与しました。
対照群 | アカルボース水溶液 2.4ml/kg (※1) を投与 |
---|---|
桑の葉茶の投与群 | 桑の葉茶の濃縮液 2.4ml/kg (※2) を投与 |
(※2) 桑の葉茶を、市販パッケージに記載された方法で熱水抽出したもの (つまり普通にお茶として淹れたもの) を200倍に濃くした濃縮液。
③ その後、10分置きに18回採血し、血糖値の変化を調べました。
つまり、私たちヒト (一般的な成人) に置き換えて考えたときに、
- アカルボース1錠を服用した場合
- 桑の葉茶2Lを飲んだ場合
この2つの場合に、食後の血糖値がどのように変化するかを容易に比較できる、一つの目安としての実験となります。
【ポイント解説】
●桑の葉茶について200倍の濃縮液を使用するのは、身体の小さいラットに、私たちヒトが普通に淹れた桑茶を飲むのと同割合のお茶成分を効率的に投与するためです。
●アカルボースと桑の葉茶の効果が公平に比較できるよう、その成分量はきちんと調整された上で実験ラットに投与されています。
つまり、アカルボース1錠を服用するのと同じ程度の血糖値抑制効果を得るためには、果たしてどれだけの量の桑の葉茶を飲めばよいのか?
それがこの実験結果を見れば分かるわけです。
もちろん動物実験ですから、この結果がそっくりそのままヒトに当てはまるとは限りませんが、それにしても参考にはなります。
とても興味津々の実験ですよね。
スクロース水溶液での実験が終わった後、マルトース水溶液でも同様の実験をします。
さて、気になる実験の結果は…?
①スクロース水溶液を用いた実験結果
アカルボース水溶液を投与した対照群は、当然のことながら投与後120分間、血糖値抑制効果が持続しました。
それに対し、桑の葉茶の投与群では、投与後約20分間のみ、有意な血糖値の低下が見られました。
つまり、桑の葉茶200倍濃縮液が食後の血糖値を有意に抑制した作用時間は、アカルボース1錠の120分に対し、その1/6の20分間であるという結果が出ました。
②マルトース水溶液を用いた実験結果
上記のスクロース水溶液を用いた実験においては、糖尿病薬アカルボースに比べ、桑の葉茶の血糖値抑制効果があまり顕著に見られませんでした。
そこで、次にマルトース水溶液を用いた実験では、さらに桑の葉茶の濃度を高めることにしました。
スクロースでの実験よりも桑の葉茶の量を6倍に増やし、1200倍の濃縮液をつくります。
これをラットの体重に比して2.4ml/kg、ラットに投与しました。
対照群に投与するアカルボース水溶液については、スクロースでの実験と同様、アカルボース1錠分を溶かして10ml水溶液としたものを、ラットの体重に比して2.4ml/kg、ラットに投与しました。
そして同じように、マルトース水溶液をラットに継続投与開始してから10分後、対照群にはアカルボース水溶液を、そして桑の葉茶の投与群には桑の葉茶1200倍濃縮液の投与を始め、やはり10分おきに採血、血液検査を行いました。
その結果、アカルボース水溶液の有意な血糖値抑制作用が30分間見られたのに対し、桑の葉茶1200倍濃縮液の有意な血糖値抑制作用は110分間持続しました。
さすがに濃度を高めただけあって、桑の葉茶の血糖値抑制効果が顕著に現れる結果 となりました。
2つの実験結果から分かる、アカルボース1錠分の効果に相当する桑の葉茶の量とは?
上記2つの実験結果から、アカルボース1錠分の効果に相当する桑の葉茶の容量を換算します。
①スクロース摂取後の血糖値抑制作用は? 桑の葉茶とアカルボースとの比較
アカルボースは、1錠を水に溶かして全体の量を10mlとした水溶液を使用しました。
つまりこの10mlのアカルボース水溶液には、アカルボース1錠分の有効成分が含まれていることになります。
桑の葉茶は、2Lを200倍に濃縮してそこに蒸留水を足し、最終容量が10mlとなるよう調整したものを使用しました。
つまりこの10mlの桑の葉茶濃縮液には、桑の葉茶2L分の有効成分が含まれていることになります。
両者はどちらも同じ10mlです。
そしてここから、ラットの体重に比して同じ分量 (2.4ml/kg) を各群のラットに投与しました。
実験の結果、アカルボース水溶液が血糖値を有意に抑制した作用時間は120分でした。
それに対し、桑の葉茶が血糖値を有意に抑制した作用時間は20分でした。
ですので、スクロースに対して、桑の葉茶 (濃縮する前) がアカルボース1錠と同等の血糖値抑制効果を発揮すると思われる容量は、
2L×(120分/20分)=12L
つまりスクロースを摂取した場合、桑の葉茶12Lを飲まなければ、アカルボース1錠と同程度の効果は期待できないと推測されます。
②マルトース摂取後の血糖値抑制作用は? 桑の葉茶とアカルボースとの比較
マルトース水溶液を使った実験では、桑の葉茶に関しては、先のスクロース水溶液の実験で使用した濃縮液の、さらに6倍の濃縮液を使用しました。
そして、アカルボース水溶液の血糖値抑制作用時間が30分であったのに対し、桑の葉茶が血糖値を有意に抑制した作用時間は110分となっています。
ですので、スクロース水溶液の場合の計算と同様、マルトースに対して桑の葉茶 (濃縮前) がアカルボース1錠と同等の血糖値抑制効果を示すと期待される容量は、
(2L×6)×(30分/110分)=約3.3L
つまりマルトースを摂取した場合、桑の葉茶3.3Lを飲まなければ、アカルボース1錠と同程度の効果は期待できないと推測されます。
【まとめ】桑の葉茶と糖尿病薬アカルボースの血糖値抑制効果を比較して分かることは?
1.桑の葉茶が血糖値を抑える効果は、正式な糖尿病薬には匹敵しない
まあ一般的な予想どおりかもしれませんが、やはり
普通の桑の葉茶を普通に飲むだけでは、医療機関で正式に処方される糖尿病薬アカルボースと同じ効果は期待できない。
ということですね。
いくらお茶が好きな方でも、食後のたびに桑の葉茶を3~10L以上もがぶがぶ飲むのは、あまり現実的とは言えませんからね。
やはり桑の葉茶はあくまでもお茶、つまり食品であり、人工的に調製された薬剤とは異なるので、商品によって成分量にも差がありますし、医師から処方される医薬品の代替とはなり得ないと考えます。
2.糖尿病や耐糖能異常の診断を受けた方は、健康茶や健康食品に頼らず、速やかに医師の治療を
したがって、はっきりと糖尿病の診断を受けた方は、やはりかかりつけのお医者さんの指示に従って、アカルボース (グルコバイ)、ボグリボース (ベイスン)、ミグリトール (セイブル)といった正式な糖尿病薬を服用すべきでしょう。
さらにその上で、糖類や油の多い食事を控える、適度な運動を心掛けるなど、根本的な生活習慣の改善が必要です。
糖尿病や耐糖能異常の治療を受けている方で、どうしても桑の葉茶を飲み続けたい場合は、必ずお医者さんに相談してくださいね。
既に述べたとおり、桑の葉に含まれるDNJには血糖値を抑制する作用があり、糖尿病薬と併用すると血糖値が下がりすぎて低血糖症を引き起こす可能性もあるからです。
3.健康維持や生活習慣病の予防効果を期待して、健康体の方が習慣的に愛用するならば、桑の葉茶がおすすめ
しかし、上記の実験結果を逆に見れば、アカルボースほどではないにしても桑の葉茶にはある程度の血糖値抑制作用が存在するのも事実だと分かります。
つまり、あくまでも健康体の方が、身近に行える健康増進や生活習慣病予防の一つとして毎日の習慣に何かを取り入れたいというのであれば、桑の葉茶を始めとする種々の健康茶や良質な健康食品はおすすめです。
どんな薬もそうですが、アカルボースなど正式な治療薬は、明瞭に効き目が現れるよう効能成分を特化・濃縮して製造しています。
ですので病気の治療には効果的ですが、健康な一般人が長期に使用すると、当然ながら副作用のおそれもあります。
いくら効果的だからといって、現在健康であるにもかかわらず、健康維持や病気予防のためだけにこのような薬剤を服用していると、かえって健康を害してしまう可能性もあるわけですね。

その上で、脂質・糖分・塩分を控えた食生活や適度な運動など良い生活習慣を心がければ、正式な医薬ほどのくっきりした効能がなくとも、健康茶や食品から得られる緩やかな効果で、十分に健康的な楽しい毎日を過ごすことができるはずです。
栽培から製造工程まできちんと管理され、安心して毎日飲むことのできる桑の葉商品は、下記のカテゴリーでご紹介しています。
よろしかったら参考にしてくださいね。
オススメ!<編集中です。今しばらくお待ちください>
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